武蔵野美術大学(小平市小川町1)は10月29日~31日の3日間、コロナ禍の影響で昨年は中止となった芸術祭を行うため、学生とGMOペパボ(渋谷区)が協力し、ムサビ初の完全オンラインの芸術祭を開催する。
今年のテーマは「電脳都市・武龍(でんのうとしむーろん)」。SNSのアイコンも、世界観に合わせたデザインへ変更される
「ムサビの芸術祭らしさは、徹底した世界観の作り込み」と、実行委員会の恒谷京伽(つねやきょうか)さんは話す。「毎年違ったテーマで、校内の外観を作りあげる」と自信を見せる。
今年のテーマは「電脳都市・武龍(むーろん)」。ウイルスによる外出禁止が続く世界で、よりどころを求めて人々が生み出した仮想空間が舞台となる。
「オンラインでもムサビらしさを出したい」との思いから、バーチャルSNSサービスの「cluster(クラスター)」を活用し、架空の都市をVR(仮想現実)で徹底的に作り込んだ。来場者がゲームのようにVR空間を移動し、バーチャル展示と講評会を楽しめるデザインにした。
学生の作品をより多くの人に届けるため、GMOペパボのオンラインサービスであるハンドメードマーケット「minne(ミンネ)」と、オリジナルグッズの制作・販売サービス「SUZURI(スズリ)」で作品販売も行う。
同社は昨年、多摩美術大学と協力してオンライン学園祭で作品を販売した。minneの三好雛子さんは「作品のクオリティーの高さに驚き、もっと多くの人に見てもらいたいと感じた」と言う。他校からの反響も大きく、その経験を生かし、今年はさまざまな学校の学園祭のオンライン支援を手掛ける。
利用客の反応を直接見られないオンライン販売のデメリットを解消するため、「#minneの学園祭巡り」「#SUZURIの学園祭巡り」のハッシュタグを使ったSNS企画で工夫を凝らす。ハッシュタグを共有することで、学生と利用客が効率よく作品の情報が得られるようにした。
恒谷さんは「通常、オリジナルグッズは大量に発注しなければならないが、『SUZURI』なら画像をアップロードするだけ。生産から発送までがワンストップになる」と話す。「SUZURI」の吉沢惇(じゅん)さんは「出品者が在庫を持つ必要がなく、学園祭が終わった後も、そのまま販売を継続するケースが多い」と説明する。
「イートインのレストランがテークアウトを始めるように、今まで芸術祭に来られなかった人もオンラインなら参加できる。コロナだからこそ、今回の芸術祭が生まれた。可能性は広がっている」と恒谷さん。「『オンラインだけど面白かったではなく、オンラインだから面白かった』と感じてほしい」とも。