東久留米の自由学園(東久留米市学園町1)で2月17日、東大名誉教授の養老孟司さんが講演を行った。養老さんは解剖学者で、「バカの壁」などの著書でも知られる。
3年後に創立100周年を迎える同校が記念事業として行う「地球市民教育フォーラム」の一環で、今回が8回目。「広大な宇宙空間に青く輝くいのちの惑星、地球。そしてそこに住むすべてのいのちの持続可能性」を学びの共通テーマとする。「『子どもたちを自然の中に。脳化社会のその先へ』~養老孟司の『遺言。』~」と題し、同校講堂には200人以上が詰め掛けた。
養老さんは、近代文明社会は「効率化や都市化を常に目指して発達してきた『脳化社会』」であるとし、その歪みやさまざまな行き詰まり、矛盾について語った。若者の死や高齢者の「終活」を例に、「代々続く命の流れを自分で断ち切るのは傲慢の極み」と述べ、人間は自分が死ぬという感覚を持ち得ないこと、その感覚は生きているからこそ持てるものだと話した。『脳化社会』の先を切り開くのは「泥だらけで遊び自然体験を積んでいる子どもたち」であるとも。
講演の最後には対話形式での質問時間もあり、聴衆からの「AI時代に突入する中で私たちはどのように生きていけばよいのか」という質問に対し、養老さんは自身の経験を交え、「コンピューターが人間を使うのではない。人間がコンピューターを使っていることを常に忘れてはならない」と答えた。
講演を聞いた学生の一人は「『死』を命の営みの一部分として認めるという考え方を聞き、ネガティブでない『死』とはなにか考えようと思った」と話していた。