
ステンレス製の片手サイズの洗濯板「関さんが作った洗濯板」の「Makuake(マクアケ)」を使ったクラウドファンディングが3月15日でプロジェクト最終日を迎え、目標金額の20万円を達成し、40人のサポーターから支持を集めた。
全て手作業で製作したステンレス製の洗濯板。縦15センチ、横9.5センチのコンパクトサイズ。繊維を痛めないように仕上げられた滑らかな表面が特徴
製作したのは小平の精密板金加工業「藤電設工業」(鈴木町1)。ステンレスの加工を得意とする、創業53年の地元企業。下請けを主とする同社について、高橋翼社長は「顧客からの受注に100%頼った企業体質」と話す。会社の将来を見据え、こうした体質から良い意味で脱却する必要を感じていた矢先、コロナ禍が発生し社会が一変。そんな中、東京都中小企業振興公社が主催する「事業化チャレンジ道場」を知る。「売れる製品開発」を指標に、1年間、8人のプロダクトデザイナー(師範)と共に講座と課題に取り組んだ。
同社の強みはステンレス加工の高い技術力だが、反面、職人が手作業で製作するため価格面では大手にかなわない。高橋さんは、マーケティングなどで分析したデータを元に、あえてトレンドとは逆の発想をすることで「ニッチ層に刺さるのでは」と考えた。
「一点物の良さは製作者の思いとこだわりが、製品にダイレクトに反映されること」と感じた高橋さん。商品の背景にあるストーリーに着目。どんなシチュエーションを想定し、どんな人に向けているのか。詳細なストーリーを作り上げ、顧客に分かりやすく伝えることに注力した。
さらに、より具体性を持たせるため、農家の野菜をヒントに製作者の名前を商品名にした。展示会などに製作者が出向くと「『あなたが関さん』と喜んでもらえる」と笑顔を見せる高橋さん。道場に参加した2年間で、課題を一つずつ解決しながら「徐々に自社のデメリットをメリットに転換していった」と振り返る。
作った本人の名前の入った商品が市場に流通する。高橋さんは、こうした体験そのものが「以前の会社にはなかった」と話す。「(社員が)商品を世に送り出すワクワク感を、仕事を通して感じてもらえれば」と思いを話す。
今後は、小ロットながら、セレクトショップなどでの一般販売やふるさと納税への採用など、販路拡大を模索する。ソロのキャンパーなどに向けて、「人とは少し違うアイテム」としてアウトドアショップなどへの売り込みも検討しているという。